Raspberry PiでArcher T1U (5GHz USB無線LAN)をセットアップする方法【最速5分】
まずは結論: tp-link社の5GHz対応Wi-Fiアダプタ Archer T1U V2(AC450)は、Raspberry Pi 3B(Raspbian Stretch)で使えました♪
5GHz帯の無線LAN(Wi-Fi)に対応したRaspberry Pi 3 Model B+ を待っている間に、GW-450D2以外で5GHz帯に対応したUSBのWi-Fiアダプタが使えないか試行錯誤していて解決方法を確立!
ということで、方法を紹介します。
【追記】2018-05-27 技適関連情報やドライバの設定、使用しているチャンネルの確認方法を追加しました。
準備した物
- Raspberry Pi 3 Model B+(Raspbian Stretch)
- tp-link社のAC450 ナノ 無線LAN子機 Archer T1U(Ver. 2)
なお、ラズパイは事前にセットアップが完了して、GW-450D2の修正済みドライバが用意できているものとします。
GW-450D2のドライバの準備方法はこちらの記事をご覧ください。
セットアップ方法
Archer T1U をラズパイで使えるようにする大まかなステップは次の通りです。
- ドライバを修正する
- make & make install してドライバの設定を修正する
- 再起動する
以上!めちゃ簡単。これだけの作業であれば5分程度で終わります!
細かい手順をステップ毎に見て行きます。
ドライバを修正する
GW-450D2用に準備したドライバを修正します。rtusb_dev_id.c の中にベンダーID(VID)とプロダクトID(PID)を記載する所があるのでそこに Archer T1U の情報(調べ方は後半のおまけに記載)を追加していきます。
[highlight_bash]
$ cd ~/mt7610u_wifi_sta_v3002_dpo_20130916/common/
$ vim rtusb_dev_id.c
[/highlight_bash]
GW-450D2 用の設定の下に以下の1行を追加します。
[code]{USB_DEVICE(0x2357,0x0105)}, /* Archer T1U V2 */[/code]
diffの結果がコチラ。1行追加しただけです^^
[highlight_bash]— rtusb_dev_id.c.old 2018-05-23 00:29:53.113111775 +0900
+++ rtusb_dev_id.c 2018-05-23 00:30:10.583079765 +0900
@@ -37,6 +37,7 @@
USB_DEVICE_ID rtusb_dev_id[] = {
#ifdef MT76x0
{USB_DEVICE(0x2019,0xAB31)}, /* GW-450D */
+ {USB_DEVICE(0x2357,0x0105)}, /* Archer T1U V2 */
{USB_DEVICE(0x148F,0x7610)}, /* MT7610U */
{USB_DEVICE(0x0E8D,0x7610)}, /* MT7610U */
{USB_DEVICE_AND_INTERFACE_INFO(0x0E8D, 0x7630, 0xff, 0x2, 0xff)}, /* MT7630U */
[/highlight_bash]
make & make install してドライバの設定を修正する
ドライバの修正が終わったら、Makefileがある場所に移動します。
[code]$ cd ~/mt7610u_wifi_sta_v3002_dpo_20130916/[/code]
まず、makeします。
[code]$ make[/code]
GW-450D2のドライバをmakeしたラズパイ3Bだと、数分で終わりました。
無事に終わったら、インストールします。
[code]$ sudo make install[/code]
そして、Archer T1U の技適証明を受けた周波数帯(詳細は後半に記載)に合わせてドライバの設定を修正します。
[code]$ vi /etc/Wireless/RT2870STA/RT2870STA.dat[/code]
最小限変更するのは以下の2カ所
1)周波数帯域を日本のプリセットに設定
【前】CountryCode=
【後】CountryCode=JP
2)使用する周波数を802.11a/n混合(8)に設定
【前】WirelessMode=5
【後】WirelessMode=8
編集が終わったら保存して終了します。
その他細かい設定方法については、ドライバのドキュメントを参照してください。
[code]$ less ~/mt7610u_wifi_sta_v3002_dpo_20130916/doc/README_STA_usb[/code]
USBアダプタを接続して再起動
ここまで終わったら、USBアダプタをラズパイに接続します。
そして、再起動!
[code]$ sudo reboot[/code]
再起動が完了したらlsmodコマンドで確認してみましょう。
$ lsmod | grep mt
mt7650u_sta 995328 0
mt7650u_staがロードされています。
iwconfigコマンドで無線LANアダプタの状況を確認します。
$ iwconfig
wlan0 IEEE 802.11 ESSID:off/any
Mode:Managed Access Point: Not-Associated
Retry short limit:7 RTS thr:off Fragment thr:off
Power Management:on
ra0 Ralink STA ESSID:"***********" Nickname:"MT7610U_STA"
Mode:Managed Frequency=5.68 GHz Access Point: xx:xx:xx:xx:xx:xx
Bit Rate=135 Mb/s
RTS thr:off Fragment thr:off
Link Quality=100/100 Signal level:-32 dBm Noise level:-55 dBm
Rx invalid nwid:0 Rx invalid crypt:0 Rx invalid frag:0
Tx excessive retries:0 Invalid misc:0 Missed beacon:0
ra0として5GHz帯のAPに接続されていました!
どの周波数帯が使えるかも確認してみます。
$ iwlist ra0 channel
ra0 19 channels in total; available frequencies :
Channel 36 : 5.18 GHz
Channel 40 : 5.2 GHz
Channel 44 : 5.22 GHz
Channel 48 : 5.24 GHz
Channel 52 : 5.26 GHz
Channel 56 : 5.28 GHz
Channel 60 : 5.3 GHz
Channel 64 : 5.32 GHz
Channel 100 : 5.5 GHz
Channel 104 : 5.52 GHz
Channel 108 : 5.54 GHz
Channel 112 : 5.56 GHz
Channel 116 : 5.58 GHz
Channel 120 : 5.6 GHz
Channel 124 : 5.62 GHz
Channel 128 : 5.64 GHz
Channel 132 : 5.66 GHz
Channel 136 : 5.68 GHz
Channel 140 : 5.7 GHz
Current Frequency:5.68 GHz (Channel 136)
日本での使用が許可されているチャンネルがリストアップされていて、屋外でも使える136chに設定されていました。
Wi-Fiアダプタ(写真中央の黒いやつ)動作中の様子。緑色のLEDが点滅しています。
技適(工事設計認証)情報の確認
Linuxでドライバを使い回す際にはデバイス毎に適切な設定になるよう注意する必要があります。特に注意する必要があるのが国ごと、デバイスごとに異なる周波数帯域です。
Archer T1U V2 は工事設計認証(いわゆる技適)を取得していて、番号から詳細情報を確認することができます。
総務省の検索サイトで番号「[R] 201-163121」を検索すると、2件ヒットします。
出典: 総務省、技術基準適合証明等を受けた機器の検索より、201-163121 の検索結果
それぞれのページを確認すると以下の周波数帯が許可されていました。
5.18〜5.32 GHz (Channel 36〜64)
5.50〜5.70 GHz (Channel 100〜140)
日本で使用可能なチャンネル(ウィキペディアのIEEE 802.11より)でした。
Archer T1U V2のパッケージには「11ac/n/a 対応」と記載されていますが、総務省のページでは5GHz帯のみしか確認できませんでした。11nは規格上2.4GHz/5GHz両方の周波数帯域を使う事ができてしまうので、本デバイスをLinux(ラズパイ)で使用する場合には2.4GHz帯の電波を出さないように設定する必要があると思われます。
iwlistコマンドを使うとデバイスが使用しているチャンネルが一覧表示されるので適宜確認してみて下さい。
[code]$ iwlist ra0 channel[/code]
おまけ: ドライバの情報収集の経緯
今回 Archer T1U をラズパイに使えるようにするまでの情報収集の経緯をご紹介!
Linux対応情報を発見!
Raspberry Pi で使える5GHz帯の無線LANアダプタの情報を探し回っていたところ、Archer T1Uが使えるらしいとの情報を入手しました(確かAmazonのレビューだったような。。。)
そしてArcher T1U公式サイトのサポートページでドライバ情報を覗いてみたら、Linuxに関する質問が!
GW-450D2と同じドライバを使用しているじゃあないか!
だとしたら、vendorID(VID)、productID(PID)を登録すれば使えるはず(※)です。
※CQ出版の「すぐに作れる!ラズベリー・パイ×ネットワーク入門」に、色々な無線LANアダプタを使えるようにする記事が載っていて大変参考になりました。古い情報なのでそのままでは使えませんでしたので適宜現在の環境に合わせています。
Archer T1U には2つのバージョンがあってそれぞれ違いがあるらしいので、まずはバージョンの確認から行いました。公式サイトによると、パッケージのバーコードに記載しているらしいとのこと。
早速購入したパッケージを引っ張り出して探す事10秒、底面に型番シールを発見^^
Ver. 2でした。
Windowsやラズパイで詳細情報を確認
念のため、Windowsにセットアップして詳細情報を引き出します。
Windowsにドライバを入れて、T1Uを接続します。
デバイスマネージャーを起動して、ネットワークアダプター>TP-LINK Wireless USB Adapter を右クリックしてプロパティを表示します。
「詳細」タブで、プロパティ「Inf セクション」を選択します。
記載してある文字列から察するに、7650チップセットのようです。
プロパティ「ハードウェア ID」を選択すると、VID、PIDを確認することができます。
VID_2357、PID_0105 でした。
なお、VIDやPIDは、ラズパイにアダプタを接続してlsusbコマンドを実行しても確認できます。
$ lsusb
Bus 001 Device 004: ID 2357:0105
Bus 001 Device 003: ID 0424:ec00 Standard Microsystems Corp. SMSC9512/9514 Fast Ethernet Adapter
Bus 001 Device 002: ID 0424:9514 Standard Microsystems Corp. SMC9514 Hub
Bus 001 Device 001: ID 1d6b:0002 Linux Foundation 2.0 root hub
おまけ2: めちゃめちゃ熱くなる
Archer T1U は、GW-450D2に比べてとても小さくて良いのですが、めちゃめちゃ熱くなります。触れられない程ではないですが相当熱いです。
風通しがよい所であれば大丈夫かと思いますが、機器の中に組み込んだりすると不安定になるかもしれません。
しばらく連続稼働させて様子をみたいと思います。
まとめ: Archer T1U は5GHz帯の無線LAN子機として Raspberry Pi で使える!
GW-450D2以外の選択肢としてArcher T1Uをラズベリーパイで使う方法を紹介しました。
ドライバを修正(vendorIDとproductIDを追加)するだけで使えるようになったので、他のデバイスにも応用が利きそうです。
選択肢が増えることは良いことですね!
それではみなさん、良いラズパイ生活を(^o^)
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